第二十三話

平成二十八年 八月五日

 

名刀の「振り身」を見たくなった

 

 

 日本刀の研ぎ音を聴いたら

 日本刀の振り音{ね}が聴きたくなった

 

 六十年前、チャンバラで振ったブリキの刀はどんな音がしたろう。

 居合道で振った樋の入った模擬刀の音はかすかに「ヒュー」とか「ピッ」とかした気がした。樋のない愛刀(真剣)を振っても音はまったくしない。

 

 「刃の音」とは斬り合う刀剣が交わるときの音。映画等の刃の音はつくりもの。

 

 振り音はしないが、一度でいいから名刀を振ってみたいものだ。

 名刀の振り音{ね}でなく「振り身」を見てみたいものだ。

 

 正宗はどんな「振り身」だろうか。

 一文字良房はどんな「振り身」だろうか。

 長船長光はどんな「振り身」だろうか。

 虎徹はどんな「振り身」だろうか。

 

 双手でつかみ、双肩を振り上げ、振ってみなければ、己にとっての刀の値打ちは決まらないのではなかろうか。

 

 振ってみなければ、神や魂が宿っているか、わからぬのではないか。

 拙者の名刀とは無縁な大小に「神」が鎮座している。