「日本刀女子」は刀工になれるか

 

「日本刀女子」なる若い女群が出現している。女性の刀鍛冶ではない。が、刀鍛冶になりたいと空想している「日本刀女子」もおるだろう。

が、まず第一問の難関は、女子を弟子にとる刀匠(親方)がいるかだ。

 

 刀匠になるには“免許”がいる。

 まず、師匠の元で5年以上の修行を積むこと。その上で、文化庁の許可を得る。許可を得て、刀工の“免許”を貰うには実地試験の研修がある。

毎年、日本で唯一、たたら製鉄が続けられている島根県横田町の鍛錬道場で行われる。

 八日間の研修を「返ってよい!」と云われず無事終了すると、文化庁から終了証書が渡される。

 しかし、これが刀工合格の“免許”でない。

 研修の実技講師は名のある刀匠揃い。講師の一人にでも「まだ、未熟だ!」といわれると、その刀工のもとで一定期間の修行を積む。で、やっと“免許”がもらえる……。

 

 いや違う。“免許”に「“ ”」をふったのは、実は医師、弁護士、土木関係の一級ナントかの証明書のような「免許」は刀剣界にはないのである。

 では何をもって「刀工」といえるのか。

 

「まだ、未熟だ!」と云われようが、八日間の研修証明書を受けた者が、作刀した一口(振)を美術刀剣類制作承認申請書とともに文化庁に提出し、良い出来だとの承認書が交付されたら「刀工」となる。

つまりこれが“免許”だ。これがなくて作刀すると違法で捕まる。この承認書があれば、作刀が続けられる。

 

 これを<役所の縄張り、縦割り>などと毒つくのはおバカな現代人。

 千年の歴史を持ち、各流派が鎬{しのぎ}を削ってきた刀剣づくり。千年の“秘伝”の歴史がある。それで好いのだ。

「近代」の洗礼を受けたおバカな現代人には、すぐには理解できない。

この“聖域”に「近代」の土足で踏み入れはいけない。“お仲間同士”で問題処理すればよい。

 

近年流行りの「お城女子」「鎧女子」「日本刀女子」なる女群。彼女らを“古風”に駆り立てているのは「男女雇用機会均等法」などの欺瞞な男女平等イデオロギーを見破り、それへの腹立ちだ。

「日本刀女子」よ、刀鍛冶になるな。その理性はあると信じる。

 

 日本武道具さんの小柄工房の高野行光刀匠は“奇人”である。

「刀工のもとで一定期間の修行を積む」を、俺には俺の立派な師匠がいる、と「NO!」と云い、一口の太刀を文化庁に提出し、承認書を得て刀工となった。以後、短刀、小刀しか作っていない。

 

高野行光刀匠のことを語ろうと、前口上を述べていたら“紙面”が尽きた。

高野行光刀匠のことはまだ後日に。