古流武術ブーム

 

 古流武術の本、雑誌が大型書店にコーナーとなって置かれている。ベースボール・マガジン社の「達人入門」も好評で、NO.2が最近出された。

 

 この古流武術ブームの火つけ役は甲野善紀さんであった。そして甲野さんの陰に『バカの壁』の養老猛司さんがいた。高名な脳学者が甲野理論を支持していたことが古武術家という一般的イメージの<不可解さ>に信用を持たせた。これが甲野善紀ブームの背景にある。

 

 十年前のお二人の対談で、養老さんは柳生新陰流の「型」はニュートンの万有引力の法則を不立文字にしたものだ、とさえ云った。脳医学生たちもなるほど古流武術とはすごいものだと認識するようになり、養老さんが<お奨め>する甲野何某という武術家も信用する。

 

 要は甲野さんが「養老猛司」という汎用の技を持ったことにある。

いままで何度ものブームの気配を見てきた。しかし萎んでしまったのは、要は各武術家が汎用という技が未熟だった云える。弟子、愛好家の領域だけでしか勝負できない達人は達人にあらず、とも云える。今回のこのブームを根付かせるにはおのおのの

古流武術家の汎用の技にかかっている。

 

 「達人入門」の第3弾というわけではないが、ベースボール・マガジン社から杉山頴男事務所企画の古流武術ムック本が秋深くなった頃、刊行される。日野晃さんの武道理論を展開し、「達人入門の初級編からいま一歩、奥深さへ足を踏み入れたいと思っている。

 

 余談:

 企画進行中、取材対象のアスリートたちがオリンピックコーチとして皆、アテネへ旅立ち、往生している。

 これまた余談。

 今回の古流武術のブームの底流にあるものは「温故知新」として芽生えてきた愛国主義(民族主義)がある。そしてその奥処には「進歩」「進化」信仰の疑いが芽生えてきたとみるのだが。

 人間は「進歩」も「進化」もしてないように、人体も「進歩」も「進化」もしてないのだから。

 

平成十六年 葉月乃七日