『真説武侠一代 ケタ外れ』

 

 10月5日、「田中光四郎君を励ます集い」が九段会館で催された。

 来賓各氏の挨拶を受け、壇上に立った田中光四郎さん、一振りの脇差しを抱えていた。

 「あっ、これか」と身を乗り出したが壇上は遠く、刀身がライトに反射したのが見えただけであった。

 以前、後援者から江戸期後期の脇差しを頂戴した。不二流体術の小太刀の術に打ってつけのものだと、田中さん、嬉しそうに語っていた。

 刀身に梵字(ぼんじ)の「毘沙門天」「不動明王」が彫られているそうだ。日本武道具のあるじ、角田さんは見ておられるだろう。

 鞘の部分に小柄を差し込む櫃(ひつ)というもにがある。この櫃が破損しており、日本で第一人者といわれる鞘制作の名人に修繕してもらったそうで、この名人に紹介の労をとったのが角田さんだと田中さんが挨拶に中で語っていた。

 

 梵字とはインドで万物を創造した「梵天」が作った文字だ。サンスクリット語を表記するために用いられて、文字信仰の対象となった。

 日本刀には古くから梵字が刀身に彫られている。「不動明王」などの他、「観世音菩薩」「摩利支天」などが多い。武運を祈るためである。まあ、我々人がみたら文様にしか見えないが。

 

 引出物として、田中光四郎さんの半生を書いた『真説武侠一代 ケタ外れ』とDVD『不二流体術 護身』をいただいた。近日、発売されるだろう。ともに荘神社刊である。日本武道具さんのこのHPの荘神社のサイトから注文できるのだろう。

 

 確かに、田中光四郎さんをひと言で表わすなら武侠という文字が似合う。武道家と武侠とどう違うのか。田中さん、武道家と云われるとそんな立派なモンではありません、「ケンカ屋です」と笑う。

 「ケンカなら負けない」と云う武侠の徒の『真説武侠一代 ケタ外れ』は、こんにちの「武道家で」と自負する諸氏のノド元に突きつけられたドスである。武道家諸氏、ご一読あれ。

 

  平成十七年 神無月之八日