平成18年の大晦日
平成18年の大晦日である。年越し蕎麦を食べ、近くのお寺さんで除夜の鐘をうち、“馬”を駆け、
谷保天満宮にお参り。 帰宅してから、メール年賀を配信するのが恒例となった。
歳とると恒例にこだわると云うのではない。今年の大晦日はわからぬ。東京でない、どこかで
年越しているやも知れぬ。また、この世にいないやも知れぬ(笑)。一寸先や闇である実感が
身にしみこんでくる。歳をとるとは、こう云うことらしい。
しかし、年寄りには、とんでもない時代になった。NPOの忘年会で、これまた身にしみたが、
60歳など、まだ若造なのである(笑)。
日本武道具の角田さんには、今年、チャンネル桜のスタジオに三度来ていただいた。
ポール・マーチンさんのゲスト出演、マーチンさんの刀工体験のナレーション入れ、そして、
重花丁子の名刀匠、大野義光さんのゲスト出演の折であった。
3週続けて放映したマーチンさんの刀工体験が、1月には3週分まとめて放映される。
初体験の者が、小刀にしろ、一通りの作業をし、完成させる過程を撮ったのは世界初ではないか。
これも角田さんのご尽力のたまものである。お世話になりました。
(放映日を失念した。恥はしない、これは年寄りの常であるからだ(笑)。仁愛の精神で
チャンネル桜HPの番組表でお調べください)
大野義光さんから『大野義光 重花丁子の世界――古刀備前を追う・あゆみ』と題した、A4版より
一回り大きな写真集をいただいた。表紙の見返しにサインもしていただいた。
杉山様 「夢」 義光 と達筆で書かれてあった。「夢とは」と尋ねると「ただ書きやすい字だから
です」と答える気さくな御仁であった。
林原美術館から刊行された。非売品である。何部刷られたかわからぬが貴重な刀の本である。
林原美術館は名刀が数多く所蔵されていて、刀剣愛好家には聖地である。
とくに一文字、長船などの備前刀の宝庫である。
丁子刃文の丁子は丁子の花に似ていることからそう呼ばれた。それをさらに絢爛としたのが重花丁子
である。大野義光さんは、古備前の、この重花丁子を現代に再現させた第一人者である。
日本刀の美しさが世界の名品たるゆえんは、他の民族の剣にはない刃文である。近年、欧米人が
鉄のモノトーンの美しさに魅かれはじめたと云う。もう数十年すると、地鉄(じがね)、沸(にえ)、
匂(におい)、板目(いため)にも魅了される日が来るだろう。
そのとき、日本の義務教育を終えた者は、日本刀のイロハを常識として知っていいるという学校教育
制度ができていたものだ。
政府には、さらに伝統文化の教育を推進していただきたい。文化交流はお花、お茶、歌舞伎と云う
町人国家面は、もう止めていただきたい。日本は武の国である。日本刀の中には和歌、俳句、華道、
茶道、禅、能……。日本の美、精神がすべてが詰まっている。そう、海外へプロパガンダしていただ
きたいものだ。
平成十八年 師走之晦日