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天才独立時計師 エクスリン博士とは

氏名: ルードヴィッヒ・エクスリン (Dr. Ludwig Oechslin)
略歴:
・20代半ば、考古学や古代史、ギリシャ語の学修を済ませていた彼は、学問の道は自分には不向きであると感じ、ルツェルンにあるヨルグ・スプーリング氏の工房で修行を開始。
・その後時計製造およびアンティーク時計修復の研修のため、その期間の一部をヴァチカン市国で過ごし、1725年製「ファルネーゼ・クロック」を4年かけて研究。すべてのパーツを分解し、修復、そして再び組み立てた。
・ファルネーゼ・クロックについての論文を執筆し、ベルン大学より哲学および応用科学史の博士号を授与された。
・18世紀の天文時計を探し求めてイタリア、ドイツ、オーストリア、そしてチェコスロバキアを旅し、入手した25個をすべて分析。それらの研究について、チューリッヒのスイス連邦工科大学を含む複数の大学で講義を行った。
・ファルネーゼ・クロックの研究を着想源に、エクスリン博士が製作した「アストロラーベ」をユリス・ナルダン社社長のロルフ・シュニーダーが偶然目にすることで、二人が出会った。博士は当時31歳。
・1985年製作の「アストロラビウム・ガリレオガリレイ」を皮切りに、「トリロジー(天文三部作)」を発表。2作目は「プラネタリウム・コペルニクス」、3作目は「テリリウム・ヨハネスケプラー」。
・自由裁量を与えられた博士は、ユリス・ナルダンで20年以上にわたり活動。その間、前後に調整が可能な第二時間帯表示機能および並外れた永久カレンダー機能を誇る「GMT±パーペチュアル」、世界で初めて24時間先までの時刻を設定できるアラーム機能を組み込んだ「ソナタ」、そしてカルーセル・トゥールビヨン機構が回転する様がそのまま時刻表示機能を果たす「フリーク」(世界初のシリコン製ガンギ車採用)など、多くの革新を実現させた。
・トリロジーの発表から17年経て、2009年、博士の天才的想像力がそのまま宿る「ムーンストラック」を発表。太陽・地球・月の宇宙における相互作用が表現された、驚異的な精度を誇る極めて現代的な天文時計。
・2014年まで国際時計博物館の学芸員および理事としても活動。
・現在は自身のブランド「Ochs und Junior」を活動の中心とする傍ら、革新的なアイディアを常にユリス・ナルダンに提供し続けている。
 

天才独立時計師

 

2014年はユニークなゲストを小柄工房に迎えました。 天才独立時計師として著名なルードヴィッヒ・エクスリン博士です。 時計輸入代理店のご担当から連絡をいただき小柄工房の体験を依頼され実現しました。日本で販売会者主宰のセミナーのゲストそして来日、そのご希望が「京都旅行」と「小柄工房体験」ということでした。当日工房に現れた博士は写真の出で立ちのままで作業を始めそして終了しました。白いシャス、パンツが汚れもせず、また軍手もしないでテコ付け、和釘制作などをなんなくリズミカルにこなしました。 また作業も実に着実で慎重にあれこれ確認した上で方針が決まるとさっさと済ませてしまう姿はスイスの工房でも同じなのでしょう。天才恐るべしです。銘切りにしても台座の振動を小槌であれこれ叩いて確認し、ガムテープで補強してからさっさとオリジナルサインを彫ってしまう姿には脱帽です。また同じ道具ですが違った使い方をするのを間近で見ていて発想の違いを実感します。ランチはいつもの蕎麦屋さんでした。博士が好きな車の話、時計の話をしていて腕の時計を外し、説明してくれました。好奇心ありありなのが分かったみたいで胸のポケットから(肌身離さない!)左記の天文3部作の2点を出して見せてくれました。おまけに試作中のプロトタイプ(見た目にもかなりアバンギャルド)を見せていただき、個人的になんとも幸せなひとときでした。